Column

社史制作に見る長く続く会社の共通項

2017.09.06
イノベーションベンチャー型事業承継同族経営後継社長新文化

何件か社史の仕事をさせていただいて思うこと。

やっぱり節目節目で社史を制作したいと思われるのは長寿企業の経営者の方が多いわけです。
制作の目的も「未来の後継者のために、自分や先人の苦労や失敗を記録に残しておきたい」というもの。
まさに永続を使命と考えていらっしゃる後継ぎ社長ならではの理由です。

そんなわけで、今日はこれまでお会いした長寿企業さんの共通項を思いつくまま書いてみました。

 

【長寿企業の特長】

1)同族経営
やっぱりファミリーのほうが創業精神や経営理念や会社が大切にしている風土を受け継ぎやすい。

2)普遍的な経営理念
時代が変化しても違和感がないような、その時代時代の経営者が柔軟に受け取れるような、普遍的な内容になっている。

3)語り継がれる創業ストーリー
特に苦労したであろう創業者のエピソードは、やや波乱万丈ドラマ的な扱いで、伝説として受け継がれている。

4)後継者の存続への強い意志
規模の拡大より企業存続が最大の使命。「先代が築いた会社を俺の代でつぶしてはならない」「会社は先祖と子孫からの預かりもの」。

5)長寿企業ほど挑戦している
企業存続のためには変わり続けなくてはいけないということを知っている。
そして世代交代は最大の好機。自社の強み、今ある経営資源を活用して新たな領域に挑戦する後継者を先代も後方支援する。

6)挑戦の仕方は独特
とはいえ、会社が潰れるかもしれないほど大きなリスクがある挑戦はしない。野球でいえば、打席に立って当たるかどうかわからないのにホームランを狙って振りぬくのではなく、手堅くバントで一点一点打点を重ねる戦略。

7)長寿企業ほど遊び心がある
いい意味でゆるい。意外に尖ったブランディングを好む。でもこれまでの関係者を落胆させない、行き過ぎない絶妙なバランス感を持っている。
長寿企業の経営者は異業種企業との交流にも積極的で情報収集のアンテナを高く張っている。

8)経営者がものすごく謙虚
長寿企業の経営者は謙虚で腰の低い方が本当に多い。
ご自身の代で業態を大きく変革し、会社を再建なさったような方であっても「先代が築いた資源があったからこそ」「関係者の皆様のおかげで」と心から思っていらっしゃる美学には本当に頭が下がる。、

8)急成長や規模の拡大より経営の安定を重視
基本的に外部の資本を入れたがらないのも安定経営を重視すればこそ。「身の丈経営が永続の秘訣」を仰る経営者多数。

9)事業承継のノウハウ自体を継承
長い歴史で何度もあった世代交代時家族間のトラブル。自らの歴史に学び、円滑な事業承継を行うタイミング、ノウハウを蓄積している。
継がせる側(先代)が引き際を認識している。

10)精神的・物理的に有事に備える
長寿企業は「いい時もあれば悪い時もある」ことを知っている。好景気の時に調子に乗って過度な投資や贅沢に走らず、有事に備える。
先代の苦労や過去の危機を共有し、学んでいる会社はしんどい時代に本当に強い。

11)質素倹約の精神・
余計なものにコストはかけない。「始末する(無駄にしない)精神」を重視。
社屋や社長室を華美にしたりしない。経営者も謙虚で堅実。

12)共存共栄/地域貢献
会社を取り巻く関係者に利益をもたらすことが企業存続に何より必要だと考えている。「三方よし」とはいうものの、買ってくれるお客様以上に、社員、仕入れ先、地域を大切にしている。近視眼的な利益に走り、「売りぬく買いぬく」ような商売はしないのが特長的。

13)家族的組織マネジメント
「ものづくりはひとづくり」。「社員は家族、社員の家族も家族」。長い時間をかけて社員を育成し信頼関係を構築する。
短期的な効率より長期的にもたらされる効果を優先する。

14)テクニック論より道徳
はやりのマーケティングとか小手先の戦術論よりも、道徳を重んじる風土が根付いている。
朝礼や社内研修のテーマはもっぱら道徳。

15)「急がば回れ」長期的な視点で重ねる経営判断
これがすべての結論かもしれません。「長い目で見てどっちが会社にとって価値がある判断なのか」、これが前述のすべての特長のベースになっているかもしれません。

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長寿企業の経営って一見古臭くて保守的な印象だけど、実は経済合理性がすごい高いんじゃないかと。

今や日本も世界も不確実な時代に突入。
今こそ長寿企業の経営哲学に学ぶ時かなぁと感じ入る日々。

私も「千年治商店」の代表として、千年続く会社をめざして(笑)で長ーーーい目で日々の経営判断していきたいと思います。

profile

山野 千枝

代表取締役

山野 千枝CHIE YAMANO

専門は広報戦略、ファミリービジネスの事業承継。1969年生まれ、岡山県出身。1991年関西学院大学卒。ベンチャー企業、コンサルティング会社を経て、大阪市経済戦略局の中小企業支援拠点「大阪産業創造館 」の創業メンバーとして2000年より参画。広報主幹、事業部長などを歴任。また2001年の創刊以来、ビジネス情報紙「Bplatz」の編集長として、多くの経営者取材に携わる。

2016年には、会社の歴史を活用した採用戦略や社史制作を手掛ける株式会社千年治商店を開業。また、近畿経済産業局のベンチャーエコシステム構築事業「Next Innovation」では、全国で初めてベンチャー政策の対象に中小企業の若手後継者を定めたアクションプランを提言。「ベンチャー型事業承継」の伝道師として国や自治体と協力し、言葉と定義を日本に定着させるために奮闘中。

「存続力は競争力」をテーマに講演実績も多数。アセアンの経営者を対象に日本の長寿企業文化についての研修などを通して、永続経営の価値を広く伝えている。

◇その他の役職
経済産業省 近畿経済産業局 「Next Innovation」事務局 プロジェクトリーダー
公財)大阪市都市型産業振興センター 広報担当フェロー
大阪産業創造館・大阪イノベーションハブ チーフプロデューサー
「ベンチャー型事業承継」伝道師
関西学院大学・関西大学「後継者ゼミ」 非常勤講師
マイクロ波化学株式会社 広報顧問