Column

斜陽産業の事業承継こそ商機?!

2016.11.22
事業承継斜陽産業

kangaku03
私は大学で、実家が家業を営んでいるという学生、つまり将来家業を継ぎ経営者になるかもしれない学生を対象に、事業承継をテーマにした授業をやっています。家業を継ぐかどうかを決断してもらうことが目的ではありません。

でも経営者の家に生まれた以上、継ぐが継がないかを決断しなくてはいけない時がいつかはやってくる。しかもそのタイミングは突然だったりするので、社会に出る前の学生時代に(まだ切羽詰まっていない時に)家業を継ぐ人生について考えておいてもらおうというもの。

先生は中小企業の若手経営者の皆さん。家業を継ぎ、手痛い経験を乗り越えた上で新たな事業領域を開拓された方々から、経営者としての覚悟を決めるまでのプロセスを聞くことで家業に向き合うキッカケにしてもらっています。

実は学生の多くは基本的に家業を継ぐことに対してネガティブです。

といっても彼らは家業の是非を判断する情報はほとんど持ってない。なんせ二十歳そこそこですから当然です。家業のことはよく知らないので、彼らの家業の見え方は一般の人が感じる業界のイメージそのもの。製造業、繊維卸、建設業…、斜陽産業に見える業界に身を置くことをただただ不安に感じているようです。

でも翻ってみると、斜陽産業の家業を継いだからこそ事業を成長させた経営者も大勢いらっしゃいます。大学の授業でも先生をお願いしているカスタムジャパンの村井社長は、ご両親が営んでいた小さな部品卸売業の顧客リストを引き継ぐ形で、05年に自動車やバイクのカスタムパーツの流通を手掛ける会社を新たに設立。今では約100人の社員を抱え、アジア各国の拠点をベースにダイナミックに事業を展開するベンチャー起業家としても知られています。そんな村井社長が学生に伝えた言葉が印象的でした。

「今後は斜陽産業に商機がある。ビジネスはどこで戦うかということが重要だ。イノベーティブな着想で勝負すれば、斜陽産業こそ宝の山だ」。

経営書ではなく、先人の実体験をシェアさせてもらうことで、若い世代の家業の見え方が見る見るうちに変わっていきます。経営者と後継者予備軍による熱い授業が来春も始まります。

(山野千枝)

profile

山野 千枝

代表取締役

山野 千枝CHIE YAMANO

1969年生まれ、岡山県出身。専門はファミリービジネスの事業承継、広報ブランディング。1991年関西学院大学卒。ベンチャー企業、コンサルティング会社を経て、大阪市経済戦略局の中小企業支援拠点「大阪産業創造館 」の創業メンバーとして2000年より参画。広報主幹、事業部長などを歴任。また2001年の創刊以来、ビジネス情報紙「Bplatz」の編集長として、多くの経営者取材に携わる。関西圏の大学で、親が商売を営む学生を対象に「ガチンコ後継者ゼミ」を主宰し、家業で新たなビジネスに挑戦する「ベンチャー型事業承継」を提唱。

また、近畿経済産業局のベンチャーエコシステム構築事業「Next Innovation」では、全国で初めてベンチャー政策の対象に中小企業の若手後継者を定めたアクションプランを提言し話題となる。2018年には、この活動を全国に広げるため、若手アトツギ特化型ベンチャー支援団体「一般社団法人ベンチャー型事業承継」を設立、代表理事に就任した。

「存続力は競争力」をテーマに講演実績も多数。アセアンの経営者を対象に日本の長寿企業文化についての研修などを通して、永続経営の価値を広く伝えている。

2016年には、会社の歴史を活用した企業ブランディング、採用メディアや社史制作を手掛ける株式会社千年治商店を開業。

◇その他の役職
一般社団法人ベンチャー型事業承継 代表理事
大阪産業創造館・大阪イノベーションハブ チーフプロデューサー
大阪市立大学 学長特別顧問
公財)大阪市都市型産業振興センター 広報担当フェロー
経済産業省 近畿経済産業局 「Next Innovation」事務局 プロジェクトリーダー
経済産業省 ファミリービジネス検討会委員
関西大学「後継者ゼミ」 非常勤講師
マイクロ波化学株式会社 広報顧問

関西学院大学(2011~17年)・甲南大学(2012~14年)非常勤講師