Column

経営者の存続への執念が生み出すイノベーション

2016.11.23
イノベーション長寿企業

世界一の長寿企業国NIPPON。

私はずっと不思議に思っていました。
資源のない小さな島国がなぜここまで経済的に成長してきたのか。

たくさんの経営者の話を聞くにつれ、ある確信を持つようになりました。

「日本の経営者の企業存続への執念こそ、イノベーションが生まれる原動力ではないか」。

長寿企業は、時代を超えて世の中に必要とされ続けてきたという証。
でも10年、いやたった1年でも世の中は変化する。
先代と同じ商売では当然生き残れない。

多くの後継社長が、時代の風を読み、生き残るために、新たな製品、サービスを生み出してきました。

注目すべきは挑戦の仕方です。

日本の会社は「存続」が最優先。
会社が潰れるほどのリスクがある挑戦はしないし、本業になんの親和性もない新規事業はやらない。「今ある経営資源」をベースにピボット戦略で独創的な商品やサービスを生み出します。

野球でいえば、ホームランを狙って振りぬくのではなく、バントで手堅く点を重ねていく感じです。

日本は起業家が少ないと嘆く世論もありますが、会社の存続をかけて挑戦する後継者がいる限り、イノベーションはたくさん生まれていくのです。

借入れの個人保証や株の問題など、家族が継がざるを得ない背景もあるものの、「同族経営」という言葉に排他的な印象を持つ人も多いし、「ボンクラ息子に継がせて会社が潰れるくらいなら優秀な社員に」と仰る社長もいます。

でも同時に、創業の精神を受け継いでいけるのも、会社が厳しい状況に陥った時に死に物狂いで頑張れるのも家族だけだということも経営者は知っている。

ある三代目社長が仰いました。

「会社は先祖と子孫からの預かりもの。だから価値を下げるのはもちろん、失くすわけには絶対にいかない」。

存続への執念、イノベーション、ファミリー。
この相関関係が生み出す長寿企業文化が日本の競争力の礎なのかもしれません。

「存続は経営者の最大の使命なり」
継ぐ人、継がせる人。会社の歴史のバトンを繋ぐすべての経営者に心からのエールを贈ります。
(山野千枝)

yamano100

profile

山野 千枝

代表取締役

山野 千枝CHIE YAMANO

1969年生まれ、岡山県出身。専門はファミリービジネスの事業承継、広報ブランディング。1991年関西学院大学卒。ベンチャー企業、コンサルティング会社を経て、大阪市経済戦略局の中小企業支援拠点「大阪産業創造館 」の創業メンバーとして2000年より参画。広報主幹、事業部長などを歴任。また2001年の創刊以来、ビジネス情報紙「Bplatz」の編集長として、多くの経営者取材に携わる。関西圏の大学で、親が商売を営む学生を対象に「ガチンコ後継者ゼミ」を主宰し、家業で新たなビジネスに挑戦する「ベンチャー型事業承継」を提唱。

また、近畿経済産業局のベンチャーエコシステム構築事業「Next Innovation」では、全国で初めてベンチャー政策の対象に中小企業の若手後継者を定めたアクションプランを提言し話題となる。2018年には、この活動を全国に広げるため、若手アトツギ特化型ベンチャー支援団体「一般社団法人ベンチャー型事業承継」を設立、代表理事に就任した。

「存続力は競争力」をテーマに講演実績も多数。アセアンの経営者を対象に日本の長寿企業文化についての研修などを通して、永続経営の価値を広く伝えている。

2016年には、会社の歴史を活用した企業ブランディング、採用メディアや社史制作を手掛ける株式会社千年治商店を開業。

◇その他の役職
一般社団法人ベンチャー型事業承継 代表理事
大阪産業創造館・大阪イノベーションハブ チーフプロデューサー
大阪市立大学 学長特別顧問
公財)大阪市都市型産業振興センター 広報担当フェロー
経済産業省 近畿経済産業局 「Next Innovation」事務局 プロジェクトリーダー
経済産業省 ファミリービジネス検討会委員
関西大学「後継者ゼミ」 非常勤講師
マイクロ波化学株式会社 広報顧問

関西学院大学(2011~17年)・甲南大学(2012~14年)非常勤講師